2023年4月12日水曜日

ハムとノイズ、原因と排除方法

ハムとノイズ、原因と排除方法


1)B電源由来のハム

 両波整流、全波整流は、100Hz、片波整流、倍電圧整流は50Hz。音を聴いてハムの発生源を推しはかることが可能。50Hzでも正弦波とスパイク状になった波形では、音はまったく違って聞こえる。

・電源回路のグラウンド基点をどこに取るか、音声信号のグランド基点をどこに取るか、それぞれの信号が交差しないようにする必要がある。例えば、一点アースしているはずなのにいくらリプルを取る対策をしても消えない場合には、一点アースを音声信号が通過している場合がある。

・整流後の一発目のコンデンサーの選択が以外と重要で、ともかくその後のリプル除去作業を楽にする。リプル除去能力の高い、電源リプル向け電解コンデンサーを使う。フィルムコンやオイルコンが、よりベスト。

電源回路のインピーダンスを下げるとノイズが全体的に下がるという効果がある。低ESRコンデンサーで高耐圧のものは存在しなしが、電解コンの並列化で抵抗値を下げることができる。

・整流直後のリプルがどれぐらいあるか把握してから、パイ型フィルター、あるいはチョークフィルターに使うコンデンサーの容量を計画する。「リプルフィルターの設計方法」を参照。


2)ヒーター電源由来のハムは、ACでは50Hz。ブリッジ整流したDCでは100Hzになる。

・メインアンプで使っている真空管が傍熱型である場合には、普通は、ヒーターをDC化する必要はない。

・重要なのは、ヒーター電源のグランドをどのように取るか。使う真空管の内部構造も影響する。双三極管には、2つの三極管の間にシールドが入っている物がある。シールドをグラウンドに落とす必要がある。アースは信号用アースではなく、影響の出やすい初段近くで落とす。

・真空管ソケットのセンターピンは、主に高周波用のアースなので可聴帯域を扱うアンプでは重要ではないが、アースにつないである方が安全。アースは信号用のアースではなく、近所のグラウンドにつないでおく。つないでおかないと宙に浮いた金属がアンプ内に存在することになり、ノイズを拾う可能性がある。

・自己バイアスの場合には、ヒーターとカソードの間で電流の飛びつきが起こることがあり、ヒーター・グラウンドをカソード・バイアス値まで持ち上げるとノイズ低減に効果がある。


3)電磁誘導のハム

 電源トランスから、出力トランスや入力トランスへ、磁界を通して乗り移るハム。たいがい、きれいな50Hzの正弦波。トランスの向きや位置を変えるか離す。磁場を通さない金属でシールドされたトランスに変更するしかない。銅板を巻きつけた静電シールドは、電波ノイズを抑制することができるが、電磁誘導によるノイズには対応できない。


4)静電誘導ノイズ

電源トランス自身がノイズ源になる。トランスに銅板を巻きつけた静電シールドは、ノイズ源の抑制に役立つ。シリコンダイオードから、またACケーブルからも静電ノイズが出る。AC電流が流れているケーブルを徹底的にツイストすることによって抑えこむことができる。信号線には、シールド線を使うことで音声信号への紛れ込みを低減できる。


5)外来ノイズ

 現代の生活環境は、ケータイ電話やコンピュータから発生する高周波ノイズにあふれている。周辺の電熱器や蛍光灯などからも低周波ノイズが紛れ込んでくる。外部からの高周波ノイズは、AC関連インレットにEMI対策を施したものを使うことで低減できる。低周波ノイズは、回路内にアンテナができているいて拾っているケースがある。アンテナができていないか観察する、あるいはシールドする。

・ボリューム位置の中間で、出てくるノイズは、ボリューム位置によって回路のインピーダンスが変化し、アンテナになっているために起こる。ボリュームのケースをアースに落としたり、アンプケースそのものを蓋をしてシールドする。

・金属的に導通していない金属部品があると、それがアンテナとなって、ノイズを拾う。最終手段は、アンプ全体を金属で覆って、シールドする。


6)マイクロフォニック・ノイズ

真空管特有のノイズ。管内の構造そのものが空気振動などを受けて、エコーのようなノイズを出す。

・真空管そのものをミリタリースペックなどの高品質なものに交換する。

・ゴムダンパー等によって、躯体から真空管を浮かして、環境の振動が真空管に伝わらないように工夫する。管の周りにシリコンのゴム輪を被せる。


7)熱雑音

 回路内の抵抗器や真空管自身が出すノイズ、暖まると出てくる。抵抗器は値が大きいほど、ノイズは大きい。インピーダンスが高い回路ほど大きくなるが、真空管アンプはそもそもインピーダンスが高いので、注意が必要。

・次段とのインピーダンス接合を工夫することによって、ノイズレベルを下げることができる。カソードフォロワーを入れたり、アウトプットトランスをいれるなど、。

・NFBによって、負帰還ループ内で発生したノイズレベルを下げることができる。

・そもそも、アンプ内の温度の上昇を抑える。ファンの追加、空気の流れを作る。放熱板、放熱フィン等を真空管に取り付ける。全体の消費電流を下げて発熱そのものを下げる。

・抵抗器をオーディオ用のものに交換する。


8)モーターボーディング

 3段以上のアンプでは、+B電源のラインを経由して、非常に低い周波数の発振が起こることがある。出力段の+B電源ラインは、音声信号の大小によってやや多めの電流が消費されるので、それに合わせて電圧が揺れている。つまり、+Bの電源ラインでも音が鳴っているのだ。この揺れが初段の+B電源に届くとそれが入力信号に付加されて、ループができてしまい、発振する。2ヘルツとは、低いもので、ボツ、ボツとスピーカーが前後に揺れて、飛び出して壊れそうになるものだ。

特にプリアンプなど、高い増幅率の場所で起きやすい。

各段の+B電源の分離がうまく行われていない場合に、別の段の+B電源に交流信号が流れ込むことが原因である。+B電源に入っているコンデンサーのことを、デカップリング・コンデンサーと呼ぶのは、そのためである。モーターボーディングが起きないまでも、このフィードバックによって、ハム音が増大している場合もあるので、要注意である。

・各段のデカップリングコンデンサーの容量を増やす。そもそも、付けていなかったということもあるのでは?

・+B電源を出力段から、その前の段へ、またその先の段へと引き継いでいる場合には、初段の+B電源を次段から取らずに、出力段から取るなどの対策がある。







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