去年11本の50EH5を友人がくれた。廃業した電気屋さんの工事で引き取ってきたということだった。この真空管はテレビやポータブルレコードプレーヤーに使われていたという程度の知識だったが、調べてみると真空管開発史の末尾を飾る、いわば最終形とも言える真空管であることが判った。素晴らしいアンプ製作をされている新忠篤さんが、ファインメットトランスと組み合わせた製作記事を書いていたという記憶もあった。新忠篤さんらしい50EH5への注目のしかただった。安価に手に入るからといって、ばかにはできない。
70年代に入ってトランジスタアンプが出てくるに従って、商品としての真空管アンプの欠点であるトランスの存在が問題にされるようになる。ヒーター電圧が50Vというのはヒータートランスを外すという策で、プレート電圧が110~130Vで足りるというのも、+B電源を電灯線からトランスなしで作るという考え方である。この仕様でプレート損失が5W、実効出力が1.5Wほどになる。電源トランスを外しても残るトランスのは、出力トランスであるが、これも2KΩ程度の負荷で済むようになっているので、変換効率が良い上に大きさも小さいもので済む。特徴的なのはgmが高いことで、グリッドの微小な変化で大きなプレート出力が取れる、つまり感度が良い。太めのカソードの周りに精密なグリッドワイヤが至近距離で巻かれているということで、製造技術的にも成熟期に到達していたというわけである。当時は、そういった高度な技術製品が安く市場に出回っていたわけで、この真空管は真空管史の末尾に輝く製品であると思うと、製作意欲が湧くというものである。
規格表に載っている典型的な規格は、プレート110V、スクリーングリッド115V カソードバイアス62オームでグリッドバイアス-3.0V、プレート電流42mA、スクリーングリッド電流が11.5mAとなっていて、合計が50mAを越えている。出力トランスには、2K~3Kが推奨されている。最大出力1.4Wで歪みが7%。
負荷が立っているにも関わらずEp-Ip曲線図上の左上の方が張っていないので、プレート電圧45Vぐらいでクリップしてしまう。軽い部品と回路で必要な出力を得る、という当時の要求に答えた推奨バイアスポイントのようだ。ポータブルレコードプレーヤーでソノシートをかけるのであれば、これでも良いかもしれないが、この真空管のポテンシャルは他のところにあるように見える。今風のバイアスポイントを探ってみよう。
電灯線100Vを使っても倍電圧整流を使えば最大270Vぐらいは取れる。プレートの最大電圧は150Vということだが、もうちょっと増やしても行けるのではないだろうかと、いろいろ試行錯誤した。出力トランスがエレキット279に付いてきたもので、仕様書では3KΩになっているが、実物には4KΩと書いてある。電圧を上げても、Ep-Ip曲線の左肩でクリップしてしまい画期的な出力増大には至らなかった。
結局倍電圧は止めて、単純にバイアスを深めにして、負荷も高め、さらにスクリーングリッド電圧をツェナーダイオードで96Vに固定した。Ep-Ip曲線図でいえば下の電流の少なく直線性の良い部分を使うわけである。さらにPG負帰還をかけて歪を改善した。
ツェナーダイオード
今回の実験で、スクリーングリッドの扱いでいろいろなことができることを発見した。ツェナーダイオードを使うと簡単に特定の電圧に固定できるので、実験するのがおもしろい。実際にLTSpiceでシミュレーションしていると、ツェナーダイオードで固定することで歪みがかなり改善できるので、このやり方は有効である。やってみて判った問題点は、結構な量の電流を流さないとうまく行かないことだ。スクリーングリッド(G2)に必要な電流がすでに11.5mA(最大で14.5mAとある。)必要な上に、ツェナーダイオードに5~10mA必要ということで、25mAぐらいを供給しないといけない。電源回路を見直して+Bを126Vまで上げたら、上記の回路にある4.7KΩでは電流不足で歪みが出てしまった。G2が96Vなので30Vに25mA流すと、この抵抗は1.2KΩでなくてはならない。1KΩに変更したら歪みは消えた。こんな簡単な回路で大した出力も取れないのに、片チャンネル55mA、ステレオで110mAの消費電力。これを電源トランスで供給すると結構な大きさのトランスになるわけだが、ここは電源トランスレスの優位性で、あまり気にしなくてよいのはおもしろい。
シャーシに組込。
共立エレショップで売られている5KΩの出力トランスを購入して組み込んだ。




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